保険金不正請求問題をきっかけに経営危機に陥っている中古車販売大手ビッグモーター(BIGMOTOR、BM)。
店舗を次々に閉鎖し、本社を店舗に移転するなど事業の縮小を開始し、経営の合理化を開始しました。
さらに、2回目の銀行団との協議も実施中です。
そんな状況の中、ビッグモーターは、会社の身売りも含めた経営再建を検討していることが分かりました。
会社の身売りとは、会社を第三者に売却することをいいます。
23年10月末を目標に、ビッグモーターを支援してくれる企業を選定するようですが、その道は困難であることが予想されます。
その最大の課題は、企業を売却するにあたり、ビッグモーターの創業家の兼重宏行氏がビッグモーターの株式の100%を保有していることです。
そもそも、これだけ世間的なイメージが悪いビッグモーターを買い取りたい企業が存在するのか、という問題もあります。
今回の記事では、以下の内容をお届けします。
今回紹介する内容
・『会社の身売り』とは
・ビッグモーターがM&Aを行うメリット
・ビッグモーターがM&Aを行うための2つの最重要課題
・M&Aが成立しない場合のビッグモーターの将来を予想
・ビッグモーターの支援企業の条件
ビッグモーターは『身売り先』を選定中
ビッグモーターは、会社存続のため『身売り先』を選定しています。
ここでは、『身売り』とは、いったい何なのか、またどんなメリットがあるのかを紹介します。
身売りは簡単にいうとM&Aだね。昔、ヤマダ電機が大塚家具を子会社化したのをイメージしてね。

『会社の身売り』とはM&Aのこと
「会社の身売り」とは会社の事業や営業権などを含む会社を親族や会社の従業員などに事業承継できず、第三者に売却することを言います。
会社の身売りは、M&A(エムアンドエー)と同じ意味合いです。
M&Aは、Merger(合併)and Acquisitions(買収)の略で、「会社あるいは経営権の取得」を意味します。
ビッグモーターの狙いは、「吸収合併」か「株式譲渡」
M&Aには、上の図のように、『新設合併』『吸収合併』『株式譲渡』『事業譲渡』の4種類の分かれます。
ビッグモーターが、『ビッグモーター』という法人格を残したいと考えているのであれば、『株式譲渡』を計画していると思われます。
もし、なりふり構わず、支援企業を探しているのであれば、支援企業に『吸収合併』してもらうことを検討しているかもしれません。
どちらにしても、相手会社があってのことなので、ビッグモーターの想いだけではどうにもならないのは、言うまでもありません。
ビッグモーターというブランドの印象が悪すぎるから、支援企業に吸収合併してもらいたいのかもね。

『吸収合併』の場合のメリットとデメリット
ビッグモーターが『吸収合併』を求めている場合、買い手(=ビッグモーターの支援企業)と売り手(=ビッグモーター)にどんなメリットとデメリットがあるか紹介します。
メリットは、『シナジー効果』が見込めるということです。
2つの企業が合併することで、会社が1つの会社になります。そのため、綿密な関係性が築け、お互いの会社の機能や販売力などを高めることが出来ます。
ビッグモーターのもっている店舗網や、中古車販売という業態に参入したいと感じる企業にとっては、魅力があるのかもしれません。
逆に、デメリットとしては、ビッグモーターを買い取るための資金を捻出しなければならないことや手続きの煩雑さなどがあります。
なにより、ビッグモーターは、世間的にイメージが非常に悪いため、買収した企業側もイメージを損ねて業績が悪化する可能性があるということです。
ビッグモーターに『潰れてほしい』って声が多いから、支援企業に悪い目が向けられてしまうかもね。

コンサル会社が候補企業を調査中
7月から大手コンサルタント会社がビッグモーターの事業再生計画に携わっています。
大手コンサル会社とは、デロイトトーマツグループの「デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社」です。
この会社はM&Aを強みにしているので、ビッグモーターの買い取り先企業の調査を現在行っていることが予想されます。
兼重宏行氏の動向が最重要課題
ビッグモーターが『吸収合併』や『株式譲渡』などのM&Aを行うためには、大きな課題が2つあります。
1つ目は、ビッグモーターの株は、創業家の兼重宏行氏が取締役社長を務める資産管理会社『ビッグアセット』がすべて保有していることです。
2つ目は、そもそも支援企業が現れる可能性が低いということです。
今回は、1つ目のビッグモーター株の内容を詳しく説明します。
ビッグモーターの株を創業家が手放さない限り、支援企業は絶対に現れない。

株式は兼重氏の資産管理会社が保有
前社長・兼重宏行氏と前副社長・兼重宏一氏は、一連の不祥事の責任をとり、7月26日付けで辞任しました。
しかし、ビッグモーターの株を100%所有する資産管理会社「ビッグアセット」の取締役は継続しています。
「ビッグアセット」は、兼重家の資産を管理する会社で、取締役社長が兼重宏行氏(父)、取締役が兼重宏一氏(息子)となっています。
つまり、兼重親子がいまだにビッグモーターの株の100%を所有している株主のため、実権を握っているということです。
そのため、ビッグモーターのM&Aを成立させるには、創業家が株を手放すよう協議する必要があります。
兼重宏行氏が株を保有し続ける理由は、利権を手放したくないのかも。

株式を兼重家が手放す場合は支援企業が現れる可能性あり
兼重家がビッグモーターの株式を売却する場合は、支援企業が現れる可能性があります。
なぜかというと、兼重家がビッグモーターが株式を保有する限り、いつまでもビッグモーターに悪いイメージが付きまとうからです。
さらに、兼重家が株式を保有する限り、支援企業が大株主である兼重親子の利益保護に加担することになり、世間的にもそれを許さないでしょう。
そのため、株式を手放すことで、『ビッグモーター=兼重家』という悪いイメージが払拭されるので、支援企業が現れる可能性があると予想されます。
兼重家が少しでも罪を償う意識があれば売却するだろうね。

株式を兼重家が手放さない場合は倒産の可能性大
逆に、兼重家が株式を手放さない場合は、ビッグモーターは倒産する可能性が高くなるでしょう。
それは、ビッグモーターを支援することが大株主の兼重家の利益に直結するため、支援する企業や銀行団は現れないということです。
以上により、M&Aを成立させるために最も重要な課題は、兼重家にビッグモーターから手を引いてもらうことです。
これだけ世間から叩かれながら株を手放さなかったら逆にすごいけどね。

支援候補企業の条件
ビッグモーターの支援企業の候補は明らかになっていませんが、10月末を目途に選定するそうです。
この支援企業は、資金が潤沢で買収が可能であればどこでもいいというわけではなりません。
あくまでも、買収企業がM&Aを行うことで、成長する見込みがないといけません。
そのため、下で紹介する2つの条件を最低限満たしている必要があると思います。
条件1:中古車販売以外の業種
ビッグモーターの世間的なイメージが最悪なため、買収会社はクリーンなイメージが必要です。
さらに、買収後に万が一不祥事が発生した場合は、顧客の信頼という点で深刻なダメージとなります。
そのため、コンプライアンスが徹底されていて、今後不祥事が発生しないと自信がある会社でなければいけません。
連日中古車業界の不祥事が話題になっているこの状態で、ネクステージやガリバーなどの中古車販売会社のライバル会社が、ビッグモーターを買収することは出来ないでしょう。
例えば、ガリバーがビッグモーターを買収して、ガリバーで不正が見つかったら、いっかんの終わりだよね。

条件2:シナジー効果がある企業
買収することで最も大切なのは、シナジー効果です。
シナジー効果とは、相乗効果のことです。
2つの企業が合併することで、単純に2の力になるのではなく、2以上の力になることが大切です。
ビッグモーターの店舗網や中古車販売のノウハウ、取引先などを活用することで、買い手側も売り手側もwin-winの関係である必要があります。
考えてみたけど、ビッグモーターと相乗効果が出る企業例がイメージ沸かなかった・・・

まとめ
今回は、ビッグモーターが身売りを検討しているという内容を紹介しました。
身売りが出来るかどうかは、創業家が株式を手放すかどうかにかかっているので、今後の兼重宏行氏の動向に注目です。
さらに、ビッグモーターを買収する勇気のある企業が現れるのか、注視していきます。
今回の参考記事:共同通信
https://news.yahoo.co.jp/pickup/6475410