【ビッグモーター】「情報漏らすな!」の誓約書の全文を紹介。秘密厳守が逆効果になってしまう理由

保険金不正請求問題がきっかけで、経営危機に陥っている中古車販売大手ビッグモーター(BIGMOTOR、BM)。

ビッグモーターは資金不足や倒産を回避するため、店舗閉店や銀行への協力依頼など様々な施策に打って出ています。

そんな中、ビッグモーターは全社員に秘密保持に関する誓約書」の提出を求めていることが分かりました。

連日報道されるような、社内の人間しか知り得ない情報が外部に漏れないよう抑制したい、という目的です。

しかし、この一般的な会社で当たり前のような誓約書でも、ビッグモーターが行うと逆効果で悪影響しかないと予想します。

この記事では、「秘密保持に関する誓約書」の全文と、なぜこの誓約書がビッグモーターにとって悪影響となるのか紹介します。

法的拘束力が発生するらしいからビッグモーターの社員はサインしない方がいいよ。

参考記事:日テレNews
https://news.yahoo.co.jp/articles/94735b6ef8df551b295b9c24dbc800e400397d1b

「秘密保持に関する誓約書」の全文と内容を紹介

ビッグモーターは全社員に下の画像の「秘密保持に関する誓約書」に関してサインと提出を求めています。

秘密保持に関する誓約書(原本写し)の画像
秘密保持に関する誓約書(原本写し)

全文の文字起こし

全文を文字起こしすると、下のとおりです。(重要な部分は、赤下線)

誓約書への著名のお願い

🔷昨今、当社内部情報がマスコミ等に対し、当社が望まない形で流出し、都度当社に対する社会からの評価が必要以上に低下してしまうという状況となっています。
🔷流出した情報の内容そのもの以上に、意図しない形での情報流出自体がお客様やお取引先その他当社関係者からの信用を失うこととなり、当社への深刻なダメージとなります。
🔷従業員の皆さんにおいては改めて、当社の秘密情報を漏洩しないことについてお約束をいただき、当社従業員として約束を守る義務を負っているということをご理解いただくという目的で誓約書を配布しております。
🔷誓約書1には「秘密情報とは何か」ということが書かれていますが、つまるところ、お客様、お取引先や業務委託先、上司、部下、同僚その他会社に関する情報など、皆さんが勤務中に知った事務に関する情報はすべて秘密情報にあたるという認識を持っていただければ間違いないということになります。
🔷誓約書2にあるとおり、仮に従業員のみなさんが業務の過程で作成した資料等であってもその資料は当社のものであり、みなさんが自由に使っていいものではありません。
🔷誓約書3にあるとおり、当社の情報システムや情報資産は当社に帰属することから、情報システムの保護等のために必要であると認められるときは、当社にて電子メールやパソコン等を確認、調査又はモニタリングすることがありますので、予めご承知置きください。
🔷誓約書4にあるとおり、仮に今後当社を退職された場合にも、約束を守っていただく必要があります。
🔷誓約書5にあるとおり、「会社に関する秘密は守る」という当社従業員としての約束を守っていただけず、当社に何らかのダメージを与えたという結果になった場合は、懲戒処分損害賠償請求のペナルティを受けていただくことになります。
🔷以上、誓約書に書かれている内容をよく注意して読んでいただき、十分に理解しした上で著名をお願いいたします。
                                       以上

重要なポイントだけを抜粋すると、以下のとおりです。

ポイント

・ビッグモーターの評価が必要以上に悪くなっている

・会社の情報は会社に帰属するものの。そのため、自由に使っていいものではない。

・秘密情報を外部に漏らさないよう約束すること

・必要に応じて、社員のパソコンやメールをチェックやモニタリングでする

・情報を漏らさないことを、会社を辞めてからも守ること

・守らなかった場合は、ペナルティを与える

一文で伝えると、「会社を辞めてからでも情報を外部に漏らした場合は、ペナルティを受けてもらうので、理解した上で署名すること」という内容です。

ビッグモーターは、マスコミに対して、「社員がSNSなどで機密情報や営業情報を書き込まないよう、徹底する」としています。

会社を辞めてからも守りなさい、っていうのは厳しい誓約書だよね。

あと、パソコンを裏でモニタリングしてくるような会社では働きたくない。

誓約書の提出を求める目的

ビッグモーターの和泉社長の社内メッセージが流出
ビッグモーターの和泉社長の社内メッセージが流出

ビッグモーターは、長い年月に渡って世間を騙し続けてきました。

そのため、ビッグモーターが今後どのように動くのか、誰もが関心を持っています。

注目されるが故、和泉社長の社内メッセージなどの情報が簡単に流出してしまいます。

私たちは、本当にビッグモーターが信頼できる会社に生まれ変わるのか注視しています。

全社員に誓約書を書かせる目的は、情報流出の防止だけでなく、「必要以上に騒ぎ立てないで欲しい」ということでしょう。

しかし、ビッグモーターはこのことを逆手にとって、「世間に生まれ変わっていくビッグモーターは見てもらっていれば、いつか信頼は取り戻せる」と捉えれば良いのではないでしょうか。

誓約書なんて書かさずに、正しいことしてればいいだけやと思うんやけど。違うかな?

誓約書は逆効果で悪影響となる理由

私は、全社員に秘密保持の誓約書にサインを書かせることは逆効果で、秘密が流出しやすくなと考えています。

さらに、このことでビッグモーター自体が被る3つの悪影響について紹介します。

まず、この誓約書の情報自体も漏れちゃってるからね。

理由その1:内部通報制度を抑制しているため危険な行為

ビッグモーターは内部通報制度が存在しない(整備されていない)ために、このように外部告発が頻発しています。

内部通報制度とは、社内の問題や不正行為を発見した社員が上司をとおさず、社内の窓口へ報告できる制度のことで、社員301人以上の企業は設置が義務化されています。

そのため、このような誓約書の提出を求めることは、「内部通報制度を使わないように」と制限をかけているような動きなので、会社として危険な行為です。

内部通報制度を整備する前に、誓約書を書くよう従業員に強制すると、締め付けに拒絶する社員や不満をかかえる社員が、マスコミにますます情報を流すことになるでしょう。

ビッグモーターが最初にするのは、なにかあったら安心して相談できる窓口を作ることだね。

理由その2:社員を締め付けが強すぎると退職者が増加する

下の記事で紹介したとおり、ビッグモーターは2023年1月~3月の間に約1000名の退職者を発生させています。

きっかけは、22年に損保大手3社が連名でビッグモーターに対し、「自動車修理に関する実態確認のお願い」という要請文書を提出したことによるものです。

この調査に対応するため、23年1月に特別調査委員会を設置しており、世間に不祥事の発覚を恐れた社員が一斉に退職したようです。

今残っている社員の中にも、転職活動中だったり、転職しようか悩んでいる人は多いはず。

そんな中、このように不祥事が見つかる前と同じように、締め付けを強要されると、会社の改善に希望を見いだせず、心理的な負担も増え、退職者がさらに増加すると推測します。

会社が潰れそうだったり、世間から厳しい目が向けられている今回のケース、辞めたくなるのは当然です。

理由その3:世間に悪印象を与える

3つ目の悪化影響は、この秘密保持の誓約書は、「世間に悪印象を与える」ということです。

ビッグモーターの以下の不祥事は、元社員や現役社員からの情報流出から世間は知ることになりました。

情報漏洩した不祥事

・元副社長の兼重宏一氏の”死刑”連呼のパワハラLINE

・元社長の社員への”バカ発言”のLINE履歴

・LINEアカウントの削除指示

・全店舗へ500万円のノルマ指示

・社内のパワハラの数々

これらの情報が、報道機関に対して通報という形で流出してくれることで、世間はこのビッグモーターという会社を正しく理解することが出来ます。

そのため、これらの情報が洩れないように誓約書を書かせる今回の行為は、世間からすると「また悪いことを企んでいる」と勘ぐってしまいます。

正しいことをしていれば、イメージも良くなって問題ないはずなんだけどね。

ビッグモーターが誓約書よりまず対策すべきこと

先述したとおり、ビッグモーターは内部通報制度が整備されていません

そのため、このことを問題視した消費者庁は、ビッグモーターは内部通報制度を整備するよう命令している状況です。

そんな状態の中で、秘密保持の誓約書にサインさせるのは危険な行為です。

まずは、「何かあったらここに連絡すれば良い」と従業員が安心して働き続けれる社内整備が大切だと感じます。

まとめ

今回は、ビッグモーターの秘密保持の誓約書の問題点について紹介しました。

このように世間から反感を買うような施策を講じるあたり、ビッグモーターの風土や体質は簡単には変わらなさそうだなと感じてしまいます。

全く関係のない業界から優秀な人材を外部取締役社長として招くことで少しは改善しそうな気がするのですが・・