2023年、中古車販売大手のビッグモーター(BIGMOTOR)は、「保険金不正請求」などの数々の不祥事が発覚し、世間を大きく賑わせています。
さらに、同業者のグッドスピードでも保険金不正請求を行っていることが発覚し、中古車業界全体に対して悪いイメージがつき、不信感も持つ人が増えてきています。
そんな中、業界2位のガリバー(Gulliver)を運営する上場会社・IDOMが2023年8月25日プレスリリースを公表しました。
内容は、「保険金不正請求の社内調査結果」と「カメラ導入によるオンラインでの可視化」についてです。
今回は、以下の内容をお届けします。
記事で紹介すること
・ガリバーのプレスリリースの内容
・ガリバーの保険金不正請求の社内調査結果
・ガリバーのカメラ導入によるオンラインでの可視化について
・同業他社の保険金不正請求についての状況
ガリバー(IDOM)の保険金不正請求についての社内調査結果
2023年8月25日、ガリバー(Gulliver)を運営する上場会社・IDOMがプレスリリースを公表しました。
結論からお伝えすると、「保険金不正請求は確認できなかった」としています。
ビッグモーターより売上台数は劣るものの、上場会社だけあってか、従来から定期監査も行っていたようで、内部統制はしっかり整備していたようです。
その内容を原文のまま紹介します。
他の会社よりは安心出来そう、というのが正直な感想です。

プレスリリースを紹介
整備・板金のトレーサビリティ確保の取組
昨今報道されている中古車業界における保険金の不正請求及び車検不正を受けて、お客様、お取引企業、地域社会などのステークホルダーの皆様が今後も安心して当社と関係を築いていただけるように、当社の整備・板金工場の状況及びトレーサビリティ確保の取組についてご報告します。
当社は、2023年8月25日時点で認証整備工場を7拠点、指定整備工場を15拠点、板金工場を8拠点運営しています。直近1年間における整備工場1拠点あたりの車検実施台数は1,179台、板金工場1拠点あたりの板金実施台数は718台です。
当社は問題を受けて独自に自社板金工場を対象とした社内調査を実施しましたが、保険金の不正請求に該当する不正な案件は確認されませんでした。
また、同様に問題となっている車検不正については、従前より定期的な監査を実施しており、こちらについても不正な案件は確認されておりません。仮に監査で不備や不正が発覚した場合には速やかに運輸支局及び保険会社に報告し、必要な対応を進めてまいります。車検及び板金工場におけるトレーサビリティ確保の取組
引用元:IDOMプレスリリース
当社の板金部門においては、1件1件損害保険会社が見積もりの妥当性をチェックしており、入庫時・作業時・完了時の車両状態を写真で記録し、損害保険会社と共有する体制を整えています。また、おクルマをお預けいただいたお客様がご自身の目で、整備・修理状況を直接ご確認いただけるよう、整備工場及び板金工場内にオンラインで閲覧可能なカメラを設置し、工場内でのおクルマの状況をリアルタイムに確認いただける環境を導入してまいります。当社では引き続き、車両の整備・修理工程におけるトレーサビリティを確保して安心しておクルマを預けていただける環境を整えてまいります。
引用元:IDOMプレスリリース
https://idom-inc.com/news/press/20230825-36049.html
プレスリリースの4つの注目ポイント
プレスリリースの文面から、ユーザー側が注目すべき以下の4つのポイントがあります。
ユーザーの信頼を獲得するための対策についても言及されているので、中古車業界の中で一歩、リードしているのかもしれません。
これらの内容について詳しく紹介します。
ポイント
・保険金不正請求は確認されなかった
・損害保険会社と写真などの情報を共有する体制が整っている
・従来より監査を実施して不正が発生しないようにしている
・今後、カメラを設置してオンラインで車を可視化する
保険金不正請求は確認されず
ガリバーで不正の実態が無いか確認するために、社内調査を実施しました。
その結果、不正は見つからないかったようです。
しかし、調査の対象期間や確認件数や確認店舗が公表されていません。
今後、不正が発覚したときに「調査が漏れていました」と言い逃れするために意図的に公表していないのか。
この点において、今回のプレスリリースの内容はやや残念です。
政治家が「確認が漏れていました」って良く言い訳してるから、あんまり安心できないかもね。

損害保険会社と情報を共有する体制
ガリバーのプレスリリースでは、保険請求に対しての体制を以下のように説明しています。
当社の板金部門においては、1件1件損害保険会社が見積もりの妥当性をチェックしており、入庫時・作業時・完了時の車両状態を写真で記録し、損害保険会社と共有する体制を整えています。
入庫時、作業時、完了時の写真を記録している、とあるので、最低限の体制は整っているようです。
しかし、ビッグモーターのように損保ジャパンとの癒着などがあれば、どれだけ記録を取っていても、保険金不正請求は発生してしまうので、その点では安心しきれない側面もあります。
写真を記録していても、その写真が正しく利用しているか分からないもんね。

従来より定期的な監査を実施
プレスリリースには、「従来より定期的な監査を実施」との記載があります。
ビッグモーターとは異なり、上場会社であるIDOMは取締役会を実施し、監査人による監査も実施しています。
この点に関しては、ビッグモーターと比較して、安心できる内容かと思います。
カメラを設置しオンラインで可視化
プレスリリースには、「オンラインで閲覧可能なカメラを設置し、工場内でのおクルマの状況をリアルタイムに確認いただける環境を導入」との記載があります。
この改善については、他の中古車会社より一歩踏み込んだアクションなので、客の信頼獲得という点で一歩リードしているのかもしれません。
ライバル会社の動向
ビッグモーター問題を受けて、他の中古車販売会社がどのような状況か紹介します。
ビッグモーター(BIGMOTOR)
ビッグモーターは、保険金不正請求が発覚し、中古車販売業界全体の信頼を揺るがした張本人です。
ビッグモーターは、2021年秋の内部告発を発端に、損保会社が調査実施をビッグモーターに依頼し、2022年2月に不正が発覚しました。
組織的な不祥事ではないと当初は主張していたが、2023年にマスコミ報道や内部告発が続き、今の状況に至っています。
新社長に就任した和泉社長が、社内にメッセージを送り、今後の経営改革方針について語っていますが、具体的な施策については、まだ明らかにされていません。
グッドスピード
中古車販売大手「グッドスピード」は8月24日、過去約4カ月間の保険金請求を自主調査した結果、1051件のうち30件で不適切な事案が見つかったと発表しています。
ビッグモーターの飛び火が同業他社にまで及んだ形となります。
自主的に世間に公表した点はビッグモーターよりマシですが、コンプライアンスを遵守しない会社は、いずれ衰退していくことになるでしょう。
ネクステージ
中古車販売大手のネクステージも、ガリバーと同様、車検や車体整備の保険金請求に関する社内調査で、不正は確認されなかったと発表しました。
また、車検や車体整備で不正が発生しない体制と、仮に不正が発生した場合でも速やかに発見できる体制を構築していると公表しています。
参照先:ネクステージ「当社の整備工場における統制環境について」公開のお知らせ
https://contents.xj-storage.jp/xcontents/31860/5828fd10/789a/45e9/b442/9c5c4c3b337e/20230823182011625s.pdf
ビッグモーターはガリバー(IDOM)の株主
ガリバーを運営するIDOMとビッグモーターは、中古車業界のライバル関係にあります。
しかし、IDOMの株主にビッグモーターが入っていることから、2社には繋がりがあります。
その点が、ガリバーの現在の経営やガバナンスに不安を感じる要素です。
下の表が2023年2月末時点のIDOMの大株主の一覧です。
ビッグモーターがIDOM株を5,697,600株(割合5.67%)も保有しています。
2023年8月10時点でIDOMの株価は824円なので、約47億円の時価総額分です。
競合会社の株式を持つ目的は、公には「純投資」としているようでですが、本当の狙いは、競合会社の情報収集でしょう。
以下の記事で、ビッグモーターのガリバーの関係性について紹介していますので、興味のある方は参考にしてください。
まとめ
今回は、ガリバーのプレスリリースの内容について紹介しました。
保険金不正請求が行われなかったとのことで、ユーザーとしてはひとまず安心です。
しかし、自己点検をどの店舗で行ったのか、何件行ったかなどは不明ですので、全てを鵜吞みにしてしまうのはやめておいた方がいいかもしれません。
ただ、今後カメラを導入して客が自分の車の状態をオンラインで見れるように改善するなど計画しているので、その点においては期待したいものです。